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高森明勅
2017.4.3 22:00

あのとき陛下にお声を…

ノンフィクション作家で
『魂でもいいから、そばにいて 3・11後の霊体験を聞く』
を上梓した奥野修司氏。

東日本大震災で4人の家族を亡くされたある女性が、
天皇皇后両陛下のお見舞いを振り返って、
こう語られたと雑誌で紹介している。

あのとき陛下にお声をかけてもらえなかったら
今頃私たちはこの世
にいなかったでしょうね。
陛下が来られるまで、
私たちは誰からも声をかけて
もらえなかったんです」と。

あっ!と思った。

「誰からも声をかけてもらえなかった」って。

そんな残酷なことがあるだろうか。

しかし、確かに誰も声をかけられなかっただろうなと、
言われてみて初めて気づいた。

皇后陛下でさえ、被災地へのご訪問を
「ためらひつつ」とお詠みになったくらいだ。

被災者の悲しみと苦悩が深ければ深いほど、
第三者は気後れして声をかけづらい。

しかし、悲しみと苦しさのどん底にいて、
しかも誰からも声をかけてもらえない孤独感は、いかばかりか。

陛下が長年にわたり、ごく当たり前のようになさって来たことが、
どれだけ困難で、有難く尊いことか、改めて心に刻んだ。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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